恋人たちのパンドラ【完】
「お待たせして申し訳ありません」
悠里はまだ青い顔をハンカチで隠しながら、先ほどの席にもどった。
「あなた、妊娠してるの?」
いきなり確信をつく質問に悠里は言葉を詰まらせる。
「返事がないと言うことは、肯定ととってよろしいかしら?」
言葉を無理矢理落ち着けながら話しているのだろう。怒りで声が震えているのが悠里にも伝わった。
「壮介さんの子なの?」
低い声でそう聞かれ悠里はコクリと頷いた。
その瞬間悠里の頬に大きな破裂音とともに衝撃が走った。
思わず見上げるとそこにはいつの間に間合いをつめたのか美津子が悠里に振りおろした手をギュッと握りしめ震わせながら立っていた。
「この、あばずれ!お前もあの女も、みんなしてこの碓井の家をめちゃくちゃにするんだわ!」