恋人たちのパンドラ【完】
ガシャン――

狂気に満ちた顔で目の前のテーブルの上に置かれたティーカップをなぎ倒した。

大きな音を聞きつけて川端が駆け付ける。

「奥様!どうなさいました!?」

先ほどまで無表情だった顔に焦りをにじませて駆け付けて来た川端は現状を把握して、美津子を抱えてソファに座らせた。

「・・・堕ろしなさい」

「え?」

ちゃんと聞こえなかった悠里が再度聞き返すと

「堕ろしなさいと言ってるの!あなた妊娠できないと壮介さんをだましてわざと妊娠したんでしょ?本当にしたたかな女ね。三国の名前を聞いてこの家に納まりたくなったんでしょうがそうはいかないわ」

「そ、んな・・・」

悠里は言葉が続かずに首を横に振るしかできない。
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