恋人たちのパンドラ【完】
辛いときはいつでも支えてくれた兄の婚約者に結婚前に会っておきたい。


悠里もそう思い今指定されていたレストランの個室に案内されるまま付いていき、席についた。

待ち合わせのレストランには少し早めに到着したせいか、仁の姿も婚約者の姿もまだなかった。

店員に椅子を引かれて、そこに腰掛けるとミネラルウォーターだけ先に出してくれたので、冷たいそれを口にした。

冷たい液体をのどに流し込んだとき、個室のドアが開く気配を感じて悠里はグラスを置きあわてて椅子から腰をあげた。

そしてそこに兄が現れるだろうと思い笑顔を向けた瞬間言葉を失った。

「―――っう・・・」

言葉が出ずに、ただ口を手で覆う悠里の目に映ったのは、もう二度と会わずにいようと誓った人だった。

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