恋人たちのパンドラ【完】
「壮介、離して!」

そう強く言い悠里は壮介の腕から一瞬抜け出そうとしたが、それはなお強められた腕の拘束で阻まれた。

「ダメだ!絶対離せない」

そう言って、ますます腕の力を強める。

「痛いの。逃げないからお願い」

今度はそっと壮介の胸を両手で押すと、腕の力がやっと緩められた。

やっと顔をあげて壮介の顔をみると、ふかく刻まれた悲しみの色が手に取るようにわかった。

(また私が壮介をこんな顔にさせたんだ・・・)

悠里は胸の奥が申し訳なさで締めつけられた。

そして次は悠里の小さな顔を両手で包みこんで、じっと見つめて来た。
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