恋人たちのパンドラ【完】
「お前はいつも俺の前からふらっといなくなる。残された俺はどうすればいい?

もう一人では一歩も前に進めないんだ。どんなに足を踏み出そうとしてもいつもお前のいた場所にとどまってしまう。

俺はお前が思っているほど強い人間じゃない。一緒に歩いてくれ。

おなかの子と一緒に・・・」




『がばっ』と悠里は伏せていた顔を上げた。

「ど、どうしてそれを・・・」


「母から聞いた。ずいぶんひどいことを言ったみたいだな。すまない」

悠里の脳裏にあの時の記憶がよみがえってきて、思わず眉をひそめてしまう。

それに気づいた壮介の指が悠里の眉間にのび優しく撫でる。

この優しい腕や指をこのまま自分のものにできればどんなにいいだろうか?

そう思う自分の気持ちに壮介の母親の言葉が蓋をする

『不幸になる運命しかない』

『産まないことが壮介のためになる』

その言葉が今も深く悠里の心にのしかかっている。
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