恋人たちのパンドラ【完】
「それって、どういう―――」

「ここ最近は来てなかったみたいだけど、以前は同じ男性がよくここにも迎えに来てたのよね」

ますます顔には面白いものでもみるような笑みが刻まれる。

その笑みに虫唾が走る。

「だからって、付き合ってるって決めつけるのはどうかな」

心の中はドロドロとマグマが煮えたぎるほどの熱い。だが表面上は冷静になんでもないことのように話を続けた。

「それだけじゃないわよ。私みたの。産婦人科で男性に支えられながら診察室に入って行くのを。名前も呼ばれてたから間違いない――」

「いい加減なこと言うな！」

今まで冷静な顔を保っていたが、とうとうマグマが口から飛び出してきた。

相手の言葉を遮り怒気をはらんだ声をあげた。

相手も今まで静かに話をしていた壮介が急に大きな声をあげたので一瞬ひるんだが

「嘘だと思うなら、一つ隣の駅の‘澤田総合病院’に木曜に行けばいいわ」

そう女は言い残して、ドアから足早に出て言った。
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