恋人たちのパンドラ【完】
「すごいね。この夜景。あっちが、三国本社?」

「違う、こっち」

ぜんぜん違う方向を指す悠里に壮介はくすくすと肩を揺らして笑った。

「さ、そんなとこに立ってると疲れるぞ。こっちに来て座って」

指差されたソファに座ると、壮介はキッチンへと向かった。

壮介のにおいに包まれた部屋で、妙にドキドキして壮介が戻ってくるのを悠里は待った。

ほどなくして、マグカップにハーブティが注がれて悠里の手に渡された。

「いい香りだね。壮介ハーブティなんて飲むの?」

「いや」

「じゃぁ、もらいもの?」

「ちがう」

「え?じゃ何で?」

「お前のために買った。そのマグカップも」

顎でマグカップを指しながら壮介が続ける。

「皿も、茶碗も、お箸も。炊飯器もバスローブも全部お前のために用意した」

「壮介?」

言っていることが理解できずに首をかしげる
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