恋人たちのパンドラ【完】

(3)守りたいもの 守るべきもの

離れがたくて、地下の駐車場まで壮介を見送りに悠里は来ていた。

エレベーターホールから壮介を見送っていると、何度か振り返りこちらに笑顔で手を振ってくる。

車に乗り込んだ壮介は車をゆっくりと発進させてクラクションを小さく‘プッ’っと鳴らして駐車場を後にした。

9年前、あの別れからこんな日がくることを想像もしていなかった悠里は全身で幸せを感じていた。

その時、一瞬おなかの赤ちゃんが‘こつん’と悠里のおなかをノックした。

悠里が集中しているともう一度‘こつん’と・・・

壮介が帰ってきたら一番に知らせよう。

今知らせるともしかすると仕事を放り出して帰ってくるかも知れない。

そんな風に思いながら頬笑みを浮かべておなかを慈しむようにそっとなでていたとき

「徳永悠里さんですよね?」

後ろから声をかけられて振り向く。
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