恋人たちのパンドラ【完】
***

悠里は消毒液の匂いのする機械の音だけがする病室で、壮介が目を覚ますのを待っていた。

命に別条はないものの出血量が多くまだ意識がもどっていなかった。

「壮介、早く目を覚ましてよ。私、話したいことまだまだたくさんあるの・・・」

目をつぶったままの壮介に悠里は話かけた。

手を握り幾分体温が戻ってきたようで安心する。

看護婦さんが妊婦の悠里に気を使い、毛布を持ってきてくれた。

点滴がポタリポタリを落ちるのを見つめて、壮介の手をただ撫でることしかできなかった。

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