恋人たちのパンドラ【完】
すると背後のドアをノックする音が聞こえた。

「はい」

返事を返すとそこには、白髪混じりの髪を後ろに綺麗に流し、仕立ての良いスーツを身に付けた男性が立っていた。


この顔には覚えがあった。三国の社長―――壮介の父親、泰三(たいぞう)だ。

椅子に腰かけていた悠里は立ち上がり、会釈をした。

泰三はドアをそっとしめて壮介の枕元へと移動し、浅い呼吸を繰り返している壮介を見て顔を曇らせた。
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