恋人たちのパンドラ【完】
「まさかこんな風に、壮介の大切な人と初めて会うことになるなんてね」

壮介を見つめたまま、話を続ける。

「壮介の母親と出会ったのは、美津子―――妻と結婚して2年目だった。当時私の部下として壮介の母親は働いてくれていたんだ」

「笑顔の素敵な子でね。本来ならば妻帯者の私など相手にできるような人じゃなかった。

でも二人愛し合うようになったのは自然な流れで・・・。

あの頃のことを思い出すと、夢のようだよ。どこかつかみどころのないだけど心も身体も満たされていて。

こんな思い今までしたことなかった。今でもかな・・・。

でも、ある日ふっと消えてしまったんだよ。今回の君のように」

「ご存じだったんですか・・・」

悠里の顔をみて泰三はコクリと頷く。
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