恋人たちのパンドラ【完】
「親父、わざわざ来たのか?」

「息子が刺されたと聞いて、仕事してるほど冷血ではないと自分では思ってるんだが」

そう言って、安心したのかふと口元を緩ませた。

「さっきの話だけど・・・」

壮介が切り出す

「盗み聞きしてたのか?立派な趣味だな」

「けが人を茶化すなよ。俺も今まで親父を親父だと思ってなかったんだろうな。心のどこかで‘俺たちを捨てた’って思ってた。でも親族の反対を押し切ってまで俺を引き取ってくれたこと感謝してる。」

しばらく沈黙があった

「そうか。お前はどうやら俺のような失敗をせずに済みそうだな。悠里さん。壮介とともに歩んでやってください」

そう言って、部屋を出て行こうとする泰三に壮介は

「今度、悠里と三人で飯でも行こう」

そう声をかけた。
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