恋人たちのパンドラ【完】
「いいのか?」

壮介の言葉で泰三は顔をあげた

「いいんだ。後ろめたさからいつも美津子に気を使って接してきていた。だが、それが彼女をきっと追いつめていたんだと思う。夫婦として我々も岐路に立たなくてはいけない時期が来たのかもしれないな」

そう話して、グラスのビールを一口飲んだ。

「悠里さんはご存じかと思うが、私達親子は普通の親子ではない。足りないものだらけで、もう引き取って何年もなるがまだまだ‘いびつ’な形の親子関係だ」

「親父・・・」

父親の言葉に壮介の言葉が詰まる。
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