恋人たちのパンドラ【完】
***

人も桜のつぼみも、まだかまだかと春を待つ3月に二人の子供が生まれた。

10時間の陣痛の間、壮介はまるで自分も陣痛を味わっているような表情でずっと悠里についていた。

悠里の母親は看護婦なだけに落ち着いて、娘の出産に対応していたが、壮介の態度を見て苦笑していた。

「悠里、あなた愛されてるわね」

悠里の母親が壮介を落ち着かせようと、飲み物を買いに行かせたときにそう母親がつぶやいた。

「そうね。誰よりも何よりも大事にされていると思う」

苦しい陣痛の間ではあるが、壮介や母親が寄り添ってくれていることで気持ちは前向きだった。

「私の離婚であなたには、結婚にいいイメージがなかっただろうから、幸せな結婚ができてよかった」

悠里の腰をさすりながら申し訳なさそうに呟いた。
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