恋人たちのパンドラ【完】
そう答えるだけの悠里に

「俺は、お前を信じてた。裏切ったのはお前だからな。俺は――俺はお前を許すことできそうにないよ」

そう言った壮介の顔からは表情が消えていて、その瞳は今までの熱気が一気に引いて、冷たく虚ろだった。

そんな壮介の震える指先が目に入った悠里は、瞳からあふれる涙が頬を伝い顎からぽたぽたと足元に落ちるのを見ていることしかできなかった。

壮介は踵を返すと、一度も振り返らずに去っていった。

呼び止めることもせずに、ただそこで泣きじゃくる悠里に

「お前あれで、ちゃんと話しなくてよかったのか?」

そう男が問いかける。

「いいのよ。あれで。悪いのは私なんだから。それは間違いないわ」

男は、力なくそう言ってその場にしゃがみこみしゃくりあげて泣く悠里の肩をだき背中をただ優しくさすっていた。


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