恋人たちのパンドラ【完】
***

5年後―――

悠里は空港の国際線ターミナルで入国の審査を受けていた。

5年間一度も帰国しなかった悠里は空港で日本のにおいを胸いっぱいに吸い込んでいた。

12月中旬の日本は誰もがクリスマスと来る年を楽しみに待ちも活気づいていた。

悠里はその中に身を置いて、自分の5年前を思い出していた。

(大丈夫・・・。大丈夫)

自分にゆっくりと言い聞かせる。そうやって5年間過ごしてきたのだ。

5年ぶりに返ってきたこの日本で、不確かだけれども、あらがうことのできない運命によってパンドラの箱が開かれることも知らずに。

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