恋人たちのパンドラ【完】
第一章  美しく悲しい過去

(1)思い出の場所

大きなシラカシの木の下で、すやすやと眠る天使と壮介が出会ったのは9年前の春のことだった。

その細い両腕で、小さな男の子と女の子を腕枕しながら、なぜかふわふわとした笑顔を浮かべて寝ている姿は、春の暖かい風と、光輝くプリズムの中で壮介の棘でささくれた心にスーッと入り込んできた。

隣で寝ていた男の子が目を擦りながら起きあがるのと同時に何かを感じたのか、女の子も同様に起きだした。

「壮介にいちゃん・・・」

まだ完全に起きていないのが分かるような声で壮介の名前を呼んだ。

「このお姉さん誰?」

壮介が天使を指差して言う。

「ユーリだよ。俺のお嫁さん」

エヘンと小さな胸を張って、男の子が言う。

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