恋人たちのパンドラ【完】
しかし、今目の前にいるのは、以前よりも色気に満ちた大人の男性だった。
髪は黒いままだったが、ツーブロックにしていてトップスは長めでウェーブをかけていた。
意志の強そうな眉は健在で、アーモンド型の形のいい目もとも以前とは変わらなかった。
しかし、以前そこにあった目もとの笑いジワはまったくなく、瞳も静かな冷たい湖のように何かを写してはいるが、そこには冷たさ以外の何も感じられなかった。
洗練されたスタイルに、見るからに高級なスーツを身にまとい、長い脚を窮屈そうに組む姿は、悠里の知っている壮介とはずいぶんと異なっていた。
以前もどこか他人を寄せ付けないそんな雰囲気はあったが、ここまでではなかった。
9年間、彼はどのように過ごしてきたのだろう。この9年が彼をこうしてしまった理由が悠里は知りたくなった。
(でも、もう私にはその権利はない・・・・)
壮介を見つめたまま、発する言葉を逡巡していると、相手のほうから会話を切り出してきた。
髪は黒いままだったが、ツーブロックにしていてトップスは長めでウェーブをかけていた。
意志の強そうな眉は健在で、アーモンド型の形のいい目もとも以前とは変わらなかった。
しかし、以前そこにあった目もとの笑いジワはまったくなく、瞳も静かな冷たい湖のように何かを写してはいるが、そこには冷たさ以外の何も感じられなかった。
洗練されたスタイルに、見るからに高級なスーツを身にまとい、長い脚を窮屈そうに組む姿は、悠里の知っている壮介とはずいぶんと異なっていた。
以前もどこか他人を寄せ付けないそんな雰囲気はあったが、ここまでではなかった。
9年間、彼はどのように過ごしてきたのだろう。この9年が彼をこうしてしまった理由が悠里は知りたくなった。
(でも、もう私にはその権利はない・・・・)
壮介を見つめたまま、発する言葉を逡巡していると、相手のほうから会話を切り出してきた。