恋人たちのパンドラ【完】

(2)罪と恋

悠里はアパートに帰り、一歩部屋に入るとその場で膝を抱えて蹲った。

壮介が触れた、耳が熱い――。

そこだけが熱を持ちすぎて‘どくん’‘どくん’と音を立てているような気さえする。

あの一瞬で悠里は確信を持った。

それは壮介のことを1ミリたりとも忘れていなかったということ。

心も体もすべてが壮介に反応して、ほかの何も目に入らない手につかない。

全身で壮介を感じ取ろうとしてしまう自分に唖然としていた。

(神様、どうか壮介のことを忘れられないなら、好きでいることだけは許してください)

9年間ですっかり忘れられたはずだった壮介との恋は、悠里の中に深く深く根ざしていた。

悠里はそんな自分に気づきこの先壮介との恋心とともに生きることを自分に許した。

たとえ思いが通じなくても、一生かなう恋ではないとしても。

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