恋人たちのパンドラ【完】
***
展示会が差し迫ってきて、悠里も三国百貨店への出入りの回数が増えた。
あれ以来壮介から特別に呼び出されたり、声をかけられたりすることもなかった。
三国側との打ち合わせは、綾川とするのがほとんどで壮介とは顔を合わせることさえなかったからだ。
そもそも専務である壮介が打合せに同席すること自体がめずらしいことであることを綾川から聞かされて納得した。
壮介と顔を合わせないことで安心したような、残念なような複雑な気持ちだった。
「徳永さん、これで搬入最後ですか?」
直樹とともに悠里は会場の設営のため百貨店閉店後に三国に来ていた。
「うん、これで全部――!」
悠里は元気よく答えた。
直樹はネクタイが邪魔にならないように第三ボタンの下あたりから、シャツの中に押し込めて袖をめくり設営の準備に取り掛かっていた。
悠里も今日はパンツスーツにバレエシューズで動きやすい服装でそれこそ働き蜂のように動き回っていた。
肩までの髪も先ほどシュシュを使ってひとまとめにして、重い荷物も運び展示の準備をはじめていた。
ディスプレイを工夫して真剣に考え込む姿は、いつもの悠里の柔らかい雰囲気とは違いどこか凛とした感じが新しい悠里の魅力を見せていると直樹は横目で盗み見ながら考えていた。
展示会が差し迫ってきて、悠里も三国百貨店への出入りの回数が増えた。
あれ以来壮介から特別に呼び出されたり、声をかけられたりすることもなかった。
三国側との打ち合わせは、綾川とするのがほとんどで壮介とは顔を合わせることさえなかったからだ。
そもそも専務である壮介が打合せに同席すること自体がめずらしいことであることを綾川から聞かされて納得した。
壮介と顔を合わせないことで安心したような、残念なような複雑な気持ちだった。
「徳永さん、これで搬入最後ですか?」
直樹とともに悠里は会場の設営のため百貨店閉店後に三国に来ていた。
「うん、これで全部――!」
悠里は元気よく答えた。
直樹はネクタイが邪魔にならないように第三ボタンの下あたりから、シャツの中に押し込めて袖をめくり設営の準備に取り掛かっていた。
悠里も今日はパンツスーツにバレエシューズで動きやすい服装でそれこそ働き蜂のように動き回っていた。
肩までの髪も先ほどシュシュを使ってひとまとめにして、重い荷物も運び展示の準備をはじめていた。
ディスプレイを工夫して真剣に考え込む姿は、いつもの悠里の柔らかい雰囲気とは違いどこか凛とした感じが新しい悠里の魅力を見せていると直樹は横目で盗み見ながら考えていた。