恋人たちのパンドラ【完】
「きゃぁ!」

急に頬に冷たい感触が当たり、悲鳴を上げる

「ははは、そんなに驚かなくても!」

いたずらが成功したような直樹の顔がそこにあり、冷たい感触は良く冷えたお茶だった。


「これでこれ以降の打合せしながら少し休憩しましょう」

良く気がつく後輩の申し出を笑顔で頷く悠里だった。

「ここのところは―――」

手元の資料を見ながら二人で打合せをしていると、不意に直樹が悠里の口に入りそうになっていた髪をすっとよけてくれた。

「髪、食べちゃいそう」

その距離感が急に恥ずかしくなった、悠里は顔を真っ赤にして

「ありがとう」

そう一言答えるのが精いっぱいだった。

顔のほてりを抑えるために悠里は直樹に一言断って、お手洗いに向かった。

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