恋人たちのパンドラ【完】
***

壮介は自分の部屋に入るなり、床に置いてあったごみ箱を蹴飛ばした。

(チッ!どうして悠里の周りには男がうろちょろするんだ)

過去も今も触れ合っているのは自分のはずなのに、いつも別の男が現れて悠里を連れ去ってしまう。

仕事も忙しく、悠里がこちらに来ていても目にすることすらかなわなかった数日がどれほど焦れていたか。

やっと悠里を目にした先ほどは他の男に触れられていた。

焦れが嫉妬に変わったことに壮介はこの時は気が付いていなかったが、心の中で何か燃えるような感覚に耐えきれなくなり、悠里を壁際に押し込んだ。

悠里を目にすれば、自分が冷静さを失い突拍子もない行動をとっていることも自覚していた。だがどうしても心も身体も悠里を探してしまう。

こんな自分をどうすればいいか、壮介は完全に自分を見失っていた。

そして自分をこんな気持ちにできるのは、ただ一人悠里しかいないこともこの9年間で思い知った。

誰も愛せないと悟っていた。

――――悠里以外は・・・

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