恋人たちのパンドラ【完】
***

日曜の夜、接待を終えたあと壮介は常宿にしている三国系列のカメリアホテルに戻っていた。

このカメリアホテルは三国でホテル事業を手がけた壮介の曽祖父の奥様の名前【椿】から名付けられた。

外資系のホテルが立ち並ぶこの一角に、立派な純日本庭園があるカメリアホテルは外国人観光客には特に人気だった。

和風の庭園で行う結婚式は人気でたくさんカップルが新しい生活のはじまりをこのホテルで迎えていた。

部屋に戻る前にラウンジで少し飲んで行こうとエレベーターで最上階へと向かう。

ここ最近壮介は、寝る前強めの酒を飲まないとなかなか寝付けなくなっていた。

ガラス貼りのエレベーターからはキラキラと輝く夜景が眼下に広がっていた。

ラウンジに向かうと入口で店員が

「碓井様こちらへどうぞ」

そう声をかけて壮介をいつもの席へと案内した。そして何も注文しなくてもバーボンのロックがスっと壮介の前に差し出された。

一口、口に含むとふと視界に二人の男女が映った。

< 76 / 233 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop