恋人たちのパンドラ【完】
***

部屋に通された悠里は、その豪華さに驚くばかりだった。

広さこそはそこまでではないが、大きな窓からは夜景が一望できる。家具や調度品も落ち着いた感じに見えた。

「座って」

壮介は目線でソファに座るように悠里に促した。

(あの仕草、昔もよくしてた)

急な展開に頭がうまくついて行っていない悠里だったが、ふとした瞬間に自分の記憶から壮介が溢れてくるのを感じた。

「これでいいか?」

そういって、悠里にワインボトルをみせてきた。

いつの間にか壮介はスリーピースの上着を脱ぎ、少しネクタイを緩めていた。

そして、悠里が頷いたのを見てワインのラベルを器用にはがしコルクをあっという間に抜いて悠里の目の前のグラスに赤い液体を注ぎ込んだ。


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