恋人たちのパンドラ【完】
そう悠里が答えるやいなや、壮介はつないでいた悠里の手を引っ張り自分の胸へと引き込んだ。

そして、悠里の柔らかい髪に右手を差し入れ梳くようにし、左手で悠里の顎を自分のほうへと向けた。

「悠里――」

そう甘く囁くように名前を呼ばれて、一度唇が触れ合う。

9年ぶりに触れ合うそこは、二人にとって思い出に残っているあの感触と少しも違わなかった。

「悠里・・・ユーリ・・・」

何度も名前を呼ばれ、その度にお互いの唇を啄ばむ。

「壮介――」

壮介の目を見つめ、名前を呼んだ瞬間、身体がふわっと宙に浮いて自分が抱かれているのに気がついた。

「あっち、行こう」

そういって悠里を抱えたまま壮介は歩き始めた。

「あの、私、重いし、自分で歩ける・・・から」

そう答える悠里に

「重くなんてない。それにもうこの腕から今日は一歩も出したくないんだ」

まっすぐと寝室に向かいながら壮介はそう言い切った。

(壮介・・・私も今日だけは、あなたの腕にずっといたいよ)

悠里も心の中で素直にそう答えていた。
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