恋人たちのパンドラ【完】
どさりと悠里の上に倒れ掛かった壮介の身体はうっすらと汗ばんでいた。

つながったまま抱きしめられ、首元に壮介はまだ口づけしていた。

「悠里∸――」

名前の後に続けたい言葉がある。それを言えば今後の二人はどうなるのだろうか。

そう考えた壮介は、今は何も考えずに悠里をこの腕の中に収めたいそう思った。

失う怖さを知っている壮介だからこそ、一秒でも悠里を自分の一番近くに置いておきたかった。

当然行うべき避妊さえ、‘もしも’のことがあれば悠里を自分のそばに置く自分に対する言い訳にできる。

(我ながらどうしようもない人間だな)

自分で自分を嘲笑い、もう一度悠里を強く抱きしめた。

その刹那、悠里の中にいた自身がするりと抜け出た。

ベッドのサイドボードの明かりをつけると、壮介は目を見張った。
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