太陽とひまわり。
「ひまわり」
「……」
「こっちを見ろ」
「……」
「ひまわり」
「太陽くん」
持っていた包丁を離す。
「たった人生の1年半だけ関わった。そのたった1年半を忘れましょ?」
ゆっくり太陽くんに近づく。
「“はじめまして”。月くんの婚約者の谷口ひまわりと申します。これからよろしくお願いします。
“お義兄さん”」
あの頃の思い出を捨てる。
そして、失くす。
「お前はそれでいいんだな?」
「はい」
「分かった」
「でも……1つだけ聞いてもいいですか?」
「なんだ?」
彼との思い出を失くす。
失くして消してそしてあたしは彼の弟と何もなかったように結婚する。
だから、最後にもう1度彼から聞きたい。