きんぐさり
「……また来たんですか。【椎名】(しいな)さん」
「んー、ここ(神社)に用があったんじゃなくてさ。ふーちゃんに会いたいから来てんだよ」
「だったら迷惑です。仕事の邪魔をしないでください」
「冷てーなぁ」
そう言う椎名さんは、いつものように太い木の枝に寝転んでいる。
欠伸をしては、こっくりこくり。
一眠りしては、ブツブツ呟いている。
そんな椎名さんの正体は、
「…(ボソッ)ほんとにこんな人が仙人なのか…」
「だから言ってるっしょー。俺は山奥に住んでるような老け顔仙人とは違うのー。
20歳前後の顔した仙人だっているんだしぃー?こ・こ・にぃー」
「その態度さえ無ければ、少なくとも50%は信じますよ」
「半分しか信じてもらえないとか、俺乙だわー」
「……(ボソッ)また、変な言葉使っちゃってるし。どこで覚えてきてんだか…」
「秘密~」
「って、地獄耳ですかアナタは!いちいち他人(ひと)の一人言に返さないでください」
【仙人】なんて、信じられるだろうか。
だけど私の仕事場である神社に出入りしてるのは、仙人と同じくらい信じられない人たちなのである。
……とにかくっ
「神木の上で寝ないでくださいっ!」
「んー……ふぁ…ねむ」
聞けよオイ。