家族
 突然後ろから、「貞雄」と声が聞こえた。男の子は振り返った。そこには自転車に乗った、坊主頭の少年がいた。

「春夫兄ちゃん」

 男の子、貞夫は少年に手を振った。

 春夫が自転車の後ろを親指で指し、にっと笑った。後ろに乗れという合図だ。

 貞夫は嬉しそうに春夫に向かって走り出した。

 貞夫、五歳のことであった・・・。
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