家族
 貞夫の様子をみて、梨佳はしまったと思った。恐らく彼は受験というキーワードから茜を思い出したのではないだろうか。もしかしたら傷つけてしまったかもしれない。黙ったままの貞夫を前に梨佳は俯いた。
「まあ、たまにはどっか行って気晴らしでもすりゃいいんじゃないか?」
 予想もしなかった貞夫の言葉に梨佳は目を丸くして彼を見た。
 あまり驚かれたので貞夫は一瞬顔をしかめたが、梨佳から目を逸らし、
「よくわかんねぇけど、ストレスが溜まってたら勉強もできないんじゃないの?」
 意外にも、まともな答えに、梨佳はなんと答えたらいいか分からず、小さく頷いた。
  
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