家族
 梨佳の反応に貞夫は恥ずかしくなったのか、ぱっぱっと砂の形を整えると、よしっと頷き、近くに落ちていた木の枝を出来あがったばかりの砂の造形物の上に差した。砂は立派な城の形をしていた。
「じゃあな」
と、貞夫は言うと、立ち上がり、くるりと踵を返して歩き始めた。
 去っていく貞夫の背中を見送りながら、梨佳は何か言わなければと慌てた。しかし、何を言ったらいいのか、言葉が出てこない。
 そうしている間にも貞夫はすたすたと離れていく。
「じゃあ、あんたがストレス解消つきあってよ!!」
 貞夫が、「はあ?」という顔で振り返った。

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