家族
その時、誰かが来る気配がした。貞夫は慌てて煙草をもみ消し、その場を離れようとした。

「ちょっと待ちなさいよ」

後ろから聞きなれた声がした。

その声を聞き、貞夫はしまったと思った。ある意味、教師よりも見つかりたくない相手に見つかってしまったのだ。

「あんた今煙草吸ってたでしょ」

声の主は小言を始めた。予想通りだったので貞夫はうんざりした。

振り返りもしない貞夫に声の主はさらに怒りを覚えたようで、さらにくどくどと文句を言い始めた。貞夫はつい耐え切れなくなり、

「うるせえよ！」

と、振り返った。振り返りながら、しまったと思った。相手にしなければよかったのだ。しかし、今更後悔しても後の祭だ。貞夫は観念して面倒くさそうな顔をつくり、声の主を睨んだ。

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