家族
 春夫は貞夫の叔父にあたる。
 春夫と貞夫は七つしか歳が離れていない。貞夫の母、つまり春夫の姉がまだ若いうちに貞夫を産んだので、春夫は七歳にしておじさんになってしまったのである。しかし、流石にその歳でおじさんと呼ばれるのはあんまりだろうと、この家庭では貞夫に春夫兄ちゃんと呼ばせていた。
 春夫に会うのは本当に久しぶりだった。梨佳の覚えている春夫は、もっとエネルギーに満ち溢れた少年のような男だった。最後にあったのは五年ほど前だった。坊主頭のおかげで春夫と分かったものの、先に顔を見てたら逆に分からなかったかも、と梨佳は思った。それほど今の春夫の顔には生気がなかった。
「よかったら途中まで一緒に帰りませんか?なんだか心細くて」
 梨佳は言ってみた。心細いのはもちろん本心だったが、なんとなく春夫をほっておけなかった。
 春夫は小さく笑って、
「じゃあ、途中まで」
と、言った。



< 9 / 37 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop