POISON DOROPS《TABOO~秘密の恋~短編集》
「ごめんね、あの時は、

 会いに行かなくて。」


「俺、振られたときは自殺しようかと思いましたよ。」


「え??」


「嘘ですよ、相変わらず、騙されやすい。


 変わらないんだ。可愛い。」


「やだ、可愛くなんか全然ないよ。

 変わったし、」

彼は目を細めて、

まぶしそうに私を見る。


「そうですね、綺麗になった。」

「え…」


その一言で私は赤くなって俯いた。


常田君は、ふふっと笑って、

私を見つめる。

懐かしい笑顔だけど、

大人になって、

スーツの似合う男性になっていた。



心臓がドキドキして顔が上げられない。


「常田君は今どうしてるの?」


「俺?

 今、父の会社の専務。

 小さい配送会社。

 先輩は?」


「私は、派遣で事務してるの。」


「派遣って、結構大変でしょう?」


「うん、初めは平気だったけど、

 今はちょっとキツイかな。」


「ふ~ん。彼氏は?」


「い、いないよ。」


「へえそうなんだ。」




私、嘘をついた。




本当はいるのに。


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