きみのこえ
夏木祥子
あら、こんにちは!
お久しぶりね。
奏に会いに来てくれたのね。
ありがとう。奏も喜ぶわよ。
今呼ぶわね。
奏ー‼お客さん来てるわよー!
…あ、返事無いけど気にしないでちょうだいね?
うちの子、声が無くなったの。
ちょうど中学1年生の夏ぐらい。
なんだかいきなり声が枯れ出したの。
最初は奏も私も風邪だと思ったんだけど一週間経っても治らないの。
しかも他に何の症状も無くて。
お医者さんにいったら悪性の腫瘍が喉にできてるから手術するって言われたの。
原因?分からないわよ。
病気ってそんなものじゃないかしら。
話に戻るけど、その腫瘍はすぐ取らないと死んじゃうらしいのよ。
私と奏は今すぐ手術をして、と頼んだの。
でもね
手術が成功したら、奏は話せなくなると言われたわ。
腫瘍が声帯のすぐそばにできて、声帯も切らなきゃいけないんですって。
命の代償が声って事よね。
神様も残酷でしょ?
奏はほんとに泣いたわ。
私もたくさん泣いた。
でもやっぱり命には変えられない。
奏は手術をしたわ。
無事成功して、奏の声は無くなったの。
やっぱりコミニュケーションの1番大切な会話がないんだから、友達も少なくなったの。
でも奏は絶対めげなかったし、弱さも一切他人には見せなかったわ。
ほんとに芯の強い子よ。私とは大違い。
あとやっぱり幼馴染の大和君の存在も大きかったわね。
彼は本当に奏の面倒をいつも見てくれたから…
感謝してもしきれないわよ。
高校生活が始まる時、私はすごい不安だったんだけど奏はケロっとしてたわ。
大和君も同じところだから大丈夫って言ってたのよね。
高校生活は、ほんとに充実してるみたいよ。
だからあなたは奏の心配なんかしなくていいのよ?
そういえば、奏なかなか来ないわねぇ。
上行って呼んでくるわね。
あら、なんでそんな顔するの?
奏、楽しみにしてるわよ。
じゃあ呼んでくるから淹れた紅茶でも飲んでいてちょうだい。
この紅茶、奏が大好きなやつなのよ。
今日はお客様がいらっしゃるから、用意してみたの。
きっと好きになるはずよ。
じゃあ、今呼んでくるわね。
奏、きっと喜ぶわ。