かえるのおじさま
「美也子!」

その名を呼んで、ギャロは駆け出した。

篠突く雨に打たれて、ただ明かりを目指して走る。

「ギャロ?」

また光った一つの稲妻に身をすくめる細い影を抱きしめて、ギャロは大きな木の下に駆け込んだ。

「なぜ来た。醜怪種に、雨は毒だろう」

「やだ、おおげさね」

魔導光石に照らされた美也子の笑顔がわざとらしいから、ギャロは少しばかりの期待をこめて聞く。

「俺を探しに来たのか?」

「当たり前でしょ」

ギャロは自分がひどく欲情していることを感じていた。

抱きしめた体は細く、しずくが垂れるほど雨に打たれて冷え切っているから、切ない。

「こんな雨の日に濡肌種の男に近づくのが、どういうことか解っているのか?」

逃さぬように大木の幹にぐいと押し付ければ、濡れた女から雨の匂いが香るから、愛しい。

「俺は旅仲間には手を出さないことに決めている。だから……いつだって雨の日は一人で……過ごしていたのに……」
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