かえるのおじさま
翌朝、二人の様子から大方の者はナニがあったのかを気取ったはずだ。
何しろ、ギャロの態度があからさますぎる。

今も朝食の席で、彼は自分の女房にぴったりと寄り添っていた。

「ちょっと、ご飯、食べにくいんだけど?」

たしなめる声さえ甘いと感じるのだろうか、彼は少し頬を染めて「そうか」と返しただけであった。

とはいえ、美也子も夕べの行為が夢ではなかったと実感させられる状況が嬉しくて仕方ないのだから、強くつき放す気にはなれない。

代わりにちょっと語気を荒げて、夫の肩をぽんぽんと叩いた。

「ほら、早く食べちゃって。今日は屋台を組んで、そのあとはネックレス作りの続きもしなくっちゃだし、忙しいのよ」

「そのことなんだがな、屋台は俺が組んでおく。お前は馬車に残って、首輪を作っていろ」

「だって! 私も屋台の組み方を覚えなくちゃ」

「今度、ゆっくり教えてやるさ。だって、これからは、その……」

言葉にするのは初めてだ。だから、ギャロの声は少し小さく、沈む。

「ずっと一緒に、居てくれるんだろう?」
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