かえるのおじさま
美也子の答えは底抜けに明るく、心強いものであった。

「当たり前でしょ。それでも、早く仕事を覚えたいの!」

「ならば、やっぱり今日は大人しくしていろ。祭りは明日からが本番なんだからな」

ギャロは美也子の前髪を掻き分け、なだらかな額に大きな唇を押し付ける。

「少し熱っぽいな」

たらいの湯浴みでは体を温め切れなかったのだろう。
今朝方から何度か、咳き込みもしている。

「その、アレで雨に濡れたから……」

大きな体を小さく丸め、上目で答えを待つしぐさは、おびえた子供のようだ。

だから、美也子も強い言葉をためらってしまう。

「解ったから。今日は馬車で大人しくしてる。それでいいんでしょ?」

「ああ、それでいい。なあに、心配するな。屋台の組み立てなんか、いつも一人でやってたんだ」

美也子の頭をなでるギャロの手は温かい。
いや、濡肌種である彼の体温は、美也子のそれよりもかなり低いのだが、手つきがなによりも温かい。
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