かえるのおじさま
いぶかしみながら扉を開ければ、そこには、固く口をひき結んだ蛙頭の少女が立っていた。
木の実集めを手伝ってくれた、あの少女だ。

「あら、どうしたの?」

美也子の優しい声に安心したのか、その子は下瞼を少し引き上げる。
大きな口が笑いの形に変わった。

「あのおじちゃんは?」

「ギャロに用事? その辺で屋台を作っていると思うから、呼んでこようか」

「いいの、いいの。え~っと……」

きゅるりと馬車の中を見回した蛙娘は、床に並んだネックレスに目を留める。

「あれ。あれを作るの、お手伝いしようと思って」

明らかな思い付きの言葉だ。
それでも美也子は気づかぬフリをして、少女を馬車に招き入れた。

「じゃあ、これを紐に通してね、こういう感じで……」

どうせビーズはたくさんあるのだから、一本分ぐらいはこの少女にくれてやってもいい。
そう思ったのだが、この少女はギャロの姪だけあって、ひどく器用であった。
それに、飲み込みも早い。
飾りのこぶを作る『サルのこぶし結び』なども、一度か二度、手本を見せただけですっかり覚えた。
< 109 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop