かえるのおじさま
それでも夕方になれば、メインイベントである奉納舞いに人足が流れる。 

その蛙頭の親子が訪ねてきたのは、ちょうどそんな頃合い、客もすいたところであった。

「お父さん、こっち、こっち」

父親の手を引くのは、もちろん、ギャロリエスだ。
ならばその父親は……やはり、ギャロに良く似ている。

いや、目の大きさや肌の色合いなどは、むしろギャロリエスの方が似ているだろう。
だが背格好や雰囲気などの相似は、けっして他人では出せない血のつながりを感じる。

その男も何かを感じたのだろう。ひどく遠くを見るように目を細めて、ギャロの顔をじっと眺めた。

「……兄さん?」

まさか兄と呼んでくれるとは、思いもしなかった……ギャロは戸惑う。

この弟と別れたのは、彼がまだ、ほんの赤ん坊だったときだ。
ギャロがこの旅座に売られる日の朝、小さな手をきゅうっと握り締めてゆりかごの中で寝ていた幼子が、兄の顔など覚えているはずは無い。

その答えは、すぐに語られた。

「ああ、母さんが言っていた通り、本当にギャロリエスにそっくりだ」

「母さんが、俺のことを?」

「よく話してくれたよ。王都にまで名の知れた、超有名道化師だって、さ」

「そうか」

ギャロは少々混乱する。
それは彼の記憶の中の母親とは重ならない。
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