かえるのおじさま
それでも、息子が道化をやめたと知ったとき、旅座に宛てて手紙を書いたそうだ。
だが、それは座長によって封さえ切らずに送り返された。
「座長さんの気持ちもわかるよ。本当の家族みたいに大事に育ててきた兄さんを『本当の家族』だってだけで取り返せる母さんが、許せなかったんだろうね」
それでも弟たちの名前を使い、おりにふれて様子を尋ねる手紙を送り続けたのも、母だったと言う。
「不器用っていうのかな、我慢強すぎるんだよ。本当は兄さんに会いたくて仕方ないのに、いろんな理屈ばっかり考えて、ついに、それを叶えること無く死んじまった」
美也子は、大きく下がったギャロの肩に、そっと手を添えた。
「ギャロはお母さん似なのね」
「……ああ」
やぐらの上で、どん、と太鼓が鳴った。
奉納舞いが始まる合図だ。
子供も大人も、屋台を離れてやぐらに向かう。
しかし、ギャロの目の前に立った親子は動こうとはしなかった。
ギャロリエスが、ごそごそと自分のポケットを探る。
「おばあちゃんから、おじちゃんにって、これを」
取り出されたのはパンパンに膨れた手のひらほどの布袋であった。
チャリチャリと硬貨のぶつかり合う音からも、その中身が何かは明らかであるが、ギャロは、あえてその袋を開いた。
中には案の定、ぎっしり詰まった硬貨と紙切れが一枚。
それを読んだギャロは、両目を覆う。
だが、それは座長によって封さえ切らずに送り返された。
「座長さんの気持ちもわかるよ。本当の家族みたいに大事に育ててきた兄さんを『本当の家族』だってだけで取り返せる母さんが、許せなかったんだろうね」
それでも弟たちの名前を使い、おりにふれて様子を尋ねる手紙を送り続けたのも、母だったと言う。
「不器用っていうのかな、我慢強すぎるんだよ。本当は兄さんに会いたくて仕方ないのに、いろんな理屈ばっかり考えて、ついに、それを叶えること無く死んじまった」
美也子は、大きく下がったギャロの肩に、そっと手を添えた。
「ギャロはお母さん似なのね」
「……ああ」
やぐらの上で、どん、と太鼓が鳴った。
奉納舞いが始まる合図だ。
子供も大人も、屋台を離れてやぐらに向かう。
しかし、ギャロの目の前に立った親子は動こうとはしなかった。
ギャロリエスが、ごそごそと自分のポケットを探る。
「おばあちゃんから、おじちゃんにって、これを」
取り出されたのはパンパンに膨れた手のひらほどの布袋であった。
チャリチャリと硬貨のぶつかり合う音からも、その中身が何かは明らかであるが、ギャロは、あえてその袋を開いた。
中には案の定、ぎっしり詰まった硬貨と紙切れが一枚。
それを読んだギャロは、両目を覆う。