かえるのおじさま
それは美也子にこれ以上のボロを出させないための配慮でもあった。

「そうじゃねえよ。どうせ死んじまった人間には何一つわかりゃあしないんだ。今までの恨み言を全部吐き出して楽になって来いって事だよ」

「そう、そういう感じ!」

「ってことで、行った、行った!」

ネルに追い払われるようにして、弟に手を引かれて、ギャロは墓場に向かう。
後に残されたギャロリエスは、胸をなでおろす美也子とネルに無邪気な視線を投げた。

「お姉ちゃんは、おかしなことを言う人ね?」

慌てて手を振って否定しようとするネルを、美也子は目線で制した。

「ねえ、ギャロリエス、他の人には内緒にしてくれる?」

子供だからと侮ったのではない。
例え子供であろうともギャロの縁者なのだから、教えるべきだと思ったのだ。

「私はね、他の世界から、飛ばされて来ちゃったの」

ギャロリエスが胸の前で両手を組む。

「素敵、おとぎ話みたい!」

美也子は苦笑した。
女の子がこの手のラブ・ファンタジー好きなのは、こちらでも通用することらしい。

「おじちゃんが運命の人だって、すぐ解った?」

「運命の人、ねえ?」

ファンタジー好きであるくせに、美也子はその言葉にいささかの懐疑を感じている。
ギャロとの出会いは、全て偶然の積み重ねだ。
偶然、異世界にとばされ、偶然、最初に出会った相手だった。
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