かえるのおじさま
美也子は飛び出た目玉の間を撫でてやった。
「約束する。もし、魔導士に会っても、私は帰らない。ずっとギャロのそばにいるから」
「本当に?」
「ええ、本当よ」
ふと、やぐらの上で行われる奉納舞が目に入った。
それは異界から来た美也子にとってあまりに幻想的な光景だ。
踊り手は黒毛の猫頭の娘。
それがやたらと袖と裾の長い、緋色の衣装を着込んで、ふわり、ふわりと鷹揚に舞う。
翻る裾が、袖が、たなびく雲のように尾を引いた。
やぐらの真後ろには冴え冴えしい月。
その逆光の影色に染まった緋は黒く、それがひらり、ふわりと空を泳ぐ様は慈雨を孕んだ雷雲を思わせる。
「きれいね」
雷雲をまとって踊る猫、それはまさしくファンタジーだ。
だが、今はここが美也子にとっての現実である。
夕闇に冷やされた心地よい風が、それを美也子に知らしめた。
ならば今、ここに感じている恋情もファンタジーなどではなく、間違いの無い現実であろう。
「だから、帰らないの」
美也子の声は、お囃子の音にまぎれて消える。
ふわりとまた一つ、舞い手の袖が月にかかった。
「約束する。もし、魔導士に会っても、私は帰らない。ずっとギャロのそばにいるから」
「本当に?」
「ええ、本当よ」
ふと、やぐらの上で行われる奉納舞が目に入った。
それは異界から来た美也子にとってあまりに幻想的な光景だ。
踊り手は黒毛の猫頭の娘。
それがやたらと袖と裾の長い、緋色の衣装を着込んで、ふわり、ふわりと鷹揚に舞う。
翻る裾が、袖が、たなびく雲のように尾を引いた。
やぐらの真後ろには冴え冴えしい月。
その逆光の影色に染まった緋は黒く、それがひらり、ふわりと空を泳ぐ様は慈雨を孕んだ雷雲を思わせる。
「きれいね」
雷雲をまとって踊る猫、それはまさしくファンタジーだ。
だが、今はここが美也子にとっての現実である。
夕闇に冷やされた心地よい風が、それを美也子に知らしめた。
ならば今、ここに感じている恋情もファンタジーなどではなく、間違いの無い現実であろう。
「だから、帰らないの」
美也子の声は、お囃子の音にまぎれて消える。
ふわりとまた一つ、舞い手の袖が月にかかった。