かえるのおじさま
それを見悟って、ギャロは諦めのため息をついた。これ以上隠しておくのは却って酷であろう。

「あんまりあてにならないと思って、黙っていたんだがな、この世界には『魔道師』って奴らがいる……」

前置きして説明されたその職に、美也子は目を輝かせた。

「やっぱり、ここはファンタジーの世界ね」

「ファンタジー……ああ、幻想物語的って事か」

苦々しい思いを苦い酒で飲み下して、ギャロはさらに説明する。

「あんたが思っているのは『魔法使い』だろ。魔道師ってのはそんなおとぎ話みたいなものじゃない。魔法みたいな不思議を見せるからそう呼ばれているだけで、れっきとした学者だ」

そもそも、空間を隔てた世界へ渡る方法を模索しているという時点で美也子には十分にファンタジーであるが、彼はあくまでも学問だと言い張った。王立の機関で研究され、理屈と計算で成り立ったものなのだと。

この世界では最新技術は王に占有権がある。つまり王立の機関で生み出された技術は市井に出回らない。

「だから、まあ、魔法みたいなものではあるけどな」

「その魔道師に頼めば、元の世界へ返してくれるの?」

「どの魔道師でもいいってわけじゃない。空間移送を専門に研究していた魔
道師を探すのは手間だろうよ。それに、奴らがいくら吹っかけてくるか、相場すら解からない」

「お金が……必要なの?」

「そりゃあそうだろう。そっちの世界じゃどうだか知らないが、物を食うにだって、酒を飲むにだって金は要る」

「そうよね、幻想じゃないんだもの」

ぐびりと喉に落ちる酒の苦味は間違いもない、現実のものだ。

「金のことはまあ……俺も協力してやるさ。独り身の男ってのは、金の使い道がなくってな」

「どうして、そこまでしてくれるの?」

ギャロは、その答えを惑った。
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