かえるのおじさま
……誰かに揺すられている……
目覚めとまどろみの間に、しゃがれた男の声が響いた。
「おい、起きろ」
聞いたことも無い声。その主を警戒して飛び起きれば、相手のアゴに強かに頭突きを食らわせてしまう。
「ぐあ!」
顔面を押さえてかがみこんだ男の肩越しに映ったのは、見たこともない風景だった。
「森?」
抱えきれないほどに太い木が重なり茂り、葉透かしの陽光が風に揺らめく。どこか高くで雲雀の鳴く声。
「これって……」
実に童話的な風景だ。その挿絵の真ん中を貫く獣道に、美也子は座っている。
一瞬は夢かとも思ったのだが、体を支える掌を突く草先も、そこから上る青臭い香りも、現実であるとしか思えないほどに鮮やかであった。
額にかかった髪をさわ、と揺らして薫風が過ぎる。
「ここは?」
「あ? マーロボーの街から少し東に下ったところだ」
アゴをさすりながら身を起こした男もまた、ひどく童話的であった。
ぽってりと恰幅のいい体には質素な被りのシャツ、腰を紐で結びとめた緩めのズボンという服装もだが、その顔は……
目覚めとまどろみの間に、しゃがれた男の声が響いた。
「おい、起きろ」
聞いたことも無い声。その主を警戒して飛び起きれば、相手のアゴに強かに頭突きを食らわせてしまう。
「ぐあ!」
顔面を押さえてかがみこんだ男の肩越しに映ったのは、見たこともない風景だった。
「森?」
抱えきれないほどに太い木が重なり茂り、葉透かしの陽光が風に揺らめく。どこか高くで雲雀の鳴く声。
「これって……」
実に童話的な風景だ。その挿絵の真ん中を貫く獣道に、美也子は座っている。
一瞬は夢かとも思ったのだが、体を支える掌を突く草先も、そこから上る青臭い香りも、現実であるとしか思えないほどに鮮やかであった。
額にかかった髪をさわ、と揺らして薫風が過ぎる。
「ここは?」
「あ? マーロボーの街から少し東に下ったところだ」
アゴをさすりながら身を起こした男もまた、ひどく童話的であった。
ぽってりと恰幅のいい体には質素な被りのシャツ、腰を紐で結びとめた緩めのズボンという服装もだが、その顔は……