かえるのおじさま
低い声はぶっきらぼうに言い放つ。
「これで文句無いだろう」
当然のごとく、ブーイングが沸き起こった。
「うるせえ! ともかく、ミャーコは俺の女房だ。手を出すやつがいたら許さん!」
すぐ手前で二人を見守っていたネルは、大きく肩をすくめる。
「まあ、いいんじゃねえの。祝砲をあげてやろうぜ」
祝砲とは花火のことだ。
祭り稼業の彼らは花火好きで、仕事前の景気づけに必ず何発かの花火を揚げるのだからストックは切らさない。
そして、ちょっとした祝いがあれば、やはり景気良く花火をあげるのだ。
ギャロは花火の詰まった樽が三つばかり、ゴロゴロと転がされてくるのを見守っている。
その横顔を盗み見ながら、美也子は自分の心にどす黒い思考が降り積もるのを感じていた。
(もし元の世界に帰れないのなら……)
いつか彼と本当の夫婦になれるだろうか。
愛情じゃなくてもいい。
愛着を感じて、手放しがたいと思ってくれればそれで十分だ。
「これで文句無いだろう」
当然のごとく、ブーイングが沸き起こった。
「うるせえ! ともかく、ミャーコは俺の女房だ。手を出すやつがいたら許さん!」
すぐ手前で二人を見守っていたネルは、大きく肩をすくめる。
「まあ、いいんじゃねえの。祝砲をあげてやろうぜ」
祝砲とは花火のことだ。
祭り稼業の彼らは花火好きで、仕事前の景気づけに必ず何発かの花火を揚げるのだからストックは切らさない。
そして、ちょっとした祝いがあれば、やはり景気良く花火をあげるのだ。
ギャロは花火の詰まった樽が三つばかり、ゴロゴロと転がされてくるのを見守っている。
その横顔を盗み見ながら、美也子は自分の心にどす黒い思考が降り積もるのを感じていた。
(もし元の世界に帰れないのなら……)
いつか彼と本当の夫婦になれるだろうか。
愛情じゃなくてもいい。
愛着を感じて、手放しがたいと思ってくれればそれで十分だ。