かえるのおじさま
……自制のきく俺ですらこうなのだから、誰かが守ってやらなくちゃならん、とギャロは思った。

「この婚姻は本当に形だけのものだ。都合のいいように使ってくれて構わない。つまり、気に食わない男に口説かれたら、既婚者だって言っちまえ。だけど、お前のメガネに叶う男がいたら……」

そういえば、冗談めかしてはいたが、玉の輿狙いだと言っていたっけ。

(それまでの間でいい)

抱いてしまおうか、仮初めにも夫婦なのだから。

(だめだ。それは俺の流儀に反する)

ギャロは美也子の前にどっかりと腰を下ろした。

「美也子、俺はどんなにいい女であろうと、旅の仲間は絶対に抱かないことにしている」

孤児である彼にとって、旅仲間とは家族にも等しい。
大事な母や、姉妹を性的な対象に見ることができないというのも理由ではあるが。
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