かえるのおじさま
「集団生活で、根無し草稼業なんだ。人間関係くらいは平穏な方が良いだろ」

色恋なんて浮かれた物のために、居場所を失うのは愚かしい。
そのぐらいなら、金で買える女が街にはいくらでもいる。

「そういうことだから、お前のことも抱くつもりはない。大事な大事な、俺の家族だからな」

「家族……」

「そうだ。俺にとっては色恋よりも大事な関係だ」

ギャロはきっぱりと言い切った。

「だから、抱かない」

もしかして自分に言い聞かせているのではないだろうか、とギャロは思う。

手を伸ばせば届くほど近く、目の前に居る女に触れたくて仕方ない自分が居るのだから。

だが、ああ、疚しい気持ちでなければ許されるだろうか……。

「なあ、美也子」

指先の吸盤は震える。
それでも、触れたい。
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