かえるのおじさま
それは濡肌種にとって何よりも心動かされる情景だ。
気分が高揚するのを感じる。

「だいたい、あんたは勝手だ! 俺は……俺は……ただ一度でいいからっ!」

行き場の無い慟哭が強すぎる雨音にかき消された。
空がまたひとつ、光る。

その強い閃光が消えた瞬間、小さな燭光が闇の中に見えた。

白っぽい、魔導光石の明かり。
それは揺れながら彼を呼ぶ。

「ギャロ! そこに居るの?」

ああ、このみっともない姿を一番見せたくない女だ。

だが今、どうしても傍にいて欲しいたった一人の女……。
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