ボールを追いかけた夏
「その脱走癖そろそろ直せよ」

「一翔に言われたくない」

「なんでだよ!?」

コイツは小川一翔(オガワカズト)。同じ野球部でキャッチャーの二番。彩乃のライバルでもある。

「よし!じゃあ、キャッチボール始めるか!」

「はいよ」

お互いに五メートルほど離れてキャッチボールを始める。キャッチボールの相手は絶対一翔なんだよなぁ。

「あっ、おい!」

「ご、ごめん!」

ボーッとしてたせいでボールを取り損ねてしまった。いけない。集中しないと。

「よし、みっけ。いっくよー!」

ボールを投げる、そして一翔がキャッチする。

「ナイス!」

「まぁ、彩乃の球は取りやすいからな」

「その理由は一翔がキャッチャーで、彩乃の速い球を取ってるから慣れてるだけだと思うけど.......」

「自分で速い球って言うなよ。.......ブフッ」

そのうち一翔が吹き出してしまった。

「いいじゃん!本当のことなんだから!」
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